一部の学者や栄養士、マスメディア等は、肉類(牛肉)を悪者扱いにして、中高年には「肉」は必要ないとばかりに、「植物性タンパク質を摂取し、動物性タンパク質は魚から摂りなさい」などと言います。本当でしょうか? 「あれも食べるな、これも食べないほうがいい」そして「中高年になると、肉を辞めて魚を食べろ、甘い物は控えなさい」と言われます。特に女性は痩せることばかりを考え、太っている人は全員悪いと言わんばかりにマスメディア等は書き立てます。 しかし、ある学者によると「20歳代女性の47%は痩せに分類され、総カロリー、鉄、カルシウムの摂取量が所要量に達していない」のだそうです。そして、血液中のコレステロールが低すぎると、精神的にも良くないことが分かってきたそうです。 「生き甲斐」とは食べることが最も重要で、食が細ると気力が無くなり、心理的にも大きな幣害が生じてうつ病などになりやすい。気力がわかない、ふさぎ込む等、つまり気慨が沸いてこないのは、動物性タンパク質が不足するとそのようになるとも言われています。
話は少しさかのぼりますが、日本での平均寿命が男女共50歳を越えたのは戦後ですが、欧米(先進国)がこの水準を突破したのは、それよりも50年も前でした。いかに日本が遅れていたか、おわかりでしょう。 戦前の日本人は、現在の何倍も大豆製品、また、魚介類・塩干物を多く摂取していましたが、短命でした。死亡原因の第一位は脳卒中でした。そして、脳卒中の予防には、肉食が最大の貢献者だと言われています。 それが高度経済成長期に入ってからは、グングンと伸び始めて、1970年代には世界一の長寿国になりました。もちろん、これには医学の進歩も関与していますが、牛乳とともに、牛肉等の畜産物を摂取する量が、次第に増えていったのです。 近年は日本も豊かになりましたが、少し前の1970年頃までは、食肉価格も高くて、動物性タンパク質も摂れませんでしたよね。そして我々の食肉業界も、その頃から徐々に輸入の食肉類が多く入荷しはじめて、価格も下がり始めてきました。ファミリーレストラン等の外食産業も急激に増えてきたのはご存知の通りです。 要は、毎日食べている植物性タンパク質と動物性タンパク質のバランスなのです。戦前戦後は、野菜が中心で、鮮魚は保存の問題で塩干物がほとんど。肉といえば、農家では祭事の時などに卵を産まなくなった雌鶏をシメて動物性タンパク質を補っていました。たまに食べるから、特に脂肪の多いもも肉が好まれる様になったようです。今も黒毛和牛神話の霜降り(サシ)が好まれているのは、その辺りの名残りかもしれませんね。
この様なサシの入った肉を好むのは日本だけだそうです。サシのことなどは、毎月配信させていただいている、丹波屋グルメマガジン(メールマガジン)で、説明させていただいている通りです。脂肪は旨味の素です。でも、サシのよくまわった旨そうなお肉も、多くは食べることができません。身体が脂肪の摂りすぎを拒んでいると言ってもいいかもしれませんね。牛肉なら赤身のおいしい、牛肉本来の味がする「くまもとあか牛」などのお肉でしたら、サシの旨みに頼る部分が少ないですのでオススメです。 また、鶏肉の脂肪には、リノール酸が多く含まれています。食用油にも含まれるリノール酸の摂りすぎは、動脈硬化、心筋梗塞になりやすいので気を付けましょう。 諸外国では逆に、肉類が中心の食生活のために、脂肪の多い肉類は好まれません。特に欧米諸国では、鶏肉(ブロイラー)は圧倒的に胸肉が好まれます。ですから、もも肉が多量に残り、安価で日本へ輸入されているのです。日本との違いは、欧米では早くから肉類が中心の食生活なので、いつも動脈硬化性の心臓病や、その他の成人病の危険性があり、また大腸ガンの発生率も高いそうです。 ちなみに日本が世界一の長寿国なのは、現在も野菜中心の植物性タンパク質60%動物性タンパク質40%で非常にバランス良く摂取されているからで、このバランスの良さは世界中で日本だけだそうです。 それではなぜ、日本では肉が長寿に貢献したのでしょうか? よく必須アミノ酸だとかプロテインという言葉を聞かれたことがあると思います。プロテイン(英語:protein)とは日本名でタンパク質のことです。タンパク質は、炭水化物、脂肪とともに動物の三大栄養素の1つです。この程度のことはご存知ですよね。 タンパク質は20種類のアミノ酸(英語:amino acid)からできています。必須アミノ酸とは、動物が自分の体内では合成できず、食物として摂取しなければならないアミノ酸のことです。人間の場合、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファンの8種で、幼児の場合はさらにヒスチジンが加わります。 肉を食べると20種類のアミノ酸を摂取することになります。さらに、肉類には、植物性タンパク質や魚介類からは補えない栄養素や生理活性物質が含まれているのです。 以上の様に、脳卒中の予防には食肉は効果的であり、、現在、日本が世界一の長寿国になれたのは、肉類の摂取量が増えたことも一因にあげられます。平均寿命が全国でトップの沖縄では、肉の摂取量は常に多いのです。昨今では、空気も環境も良い農魚村より、環境が悪い都市に住んでいる高齢者が増えてきました。それは都市に住んでいる人々は、動物性タンパク質を摂取する機会が多いことと無縁ではないのかも知れませんね。
癌、脳卒中とともに成人の3大死因とされている心筋梗塞ですが、最も影響の大きいものは、喫煙と高脂血症です。 コレステロールというとなんだかワルモノというイメージを持っておられる方もおられるのではないでしょうか。しかし、コレステロールは、人間の体の細胞膜やステロイドホルモン等の成分の1つで、とても大事なものなのです。ただ、必要以上に摂取すると、血液中のコレステロールが上がり、これらが血管の内膜に取り込まれ、脂肪の固まりを作り、動脈硬化を起こすのです。コレステロールが上がる原因として、摂取の過剰、消費の減少、コレステロールが組織に取り込まれにくくなる等が考えられます。免疫に関係するもの、遺伝的なものなどが関係してくることもあります。 肉の動物性脂肪には、摂りすぎると高脂血症の原因となる不飽和脂肪酸が含まれています。霜降り肉、バター、ベーコン、コンビーフ、ソーセージなどは摂りすぎに注意しましょう。皮を取った鶏肉、ヒレ肉、ボンレスハム等は比較的少ないといえます。 とはいえ、体内のコレステロールは、食物から摂取されるものは20%で、肝臓で作られるものが80%ぐらいなのです。また、食品から吸収されるコレステロールは40%で、残りの60%は排出されてしまうので、多少コレステロールを多く摂っても、血液中のコレステロール値には大きな影響を与えにくいことも分かってきました。 これとは別に、食物繊維の多いものは便の中にコレステロールを排出させる作用が強く、血中コレステロールを下げます。同じ繊維でも、果物や海草等の水溶性の繊維の方が、椎茸や野菜等の非水溶性の繊維より効果が高いとされています。また植物性脂肪もコレステロール値を下げるとされています(植物性脂肪の中にも、ココナツ油やヤシ油など、コレステロール値を上げるものもあるので注意してください)。逆に、植物性油ばかりで動物性脂肪をとらないと、老化を早め、がんになりやすいとの報告があります。 どうしても肉の脂肪を落としたいという場合には、シチューやすき焼きといった、肉の脂肪をそのまま使う料理より、ゆでる、蒸すといった料理法をされると、熱を通す間に脂肪を落とすことができます。また、焼く場合には、フライパンや鉄板で焼くより、網焼きの方が脂肪を落とすことができます。 肥満や高血圧も要注意ですが、要はバランスよく食べることが大切なのです。
高齢者は菜食主義ではなく、食生活を変化させ、むしろバランス良く動物性タンパク質を摂取すべきです。リタイアをしてのんびりと暮らしている老人より、いつまでも引退をせず、今も現役の第一線で頑張っておられるトップの方々は、皆さんビックリするほど元気です。 あるテレビ番組のインタビューで、今も現役の政治家をなさっており、元首相もされた方が、「週に数回は朝からでも牛肉を食べる」と言っておられたのが印象的です。 最近の研究では、痩せすぎは寿命を縮めると言われています。中高年になると気を付けていても、いつの間にかおなかが出てきます。食事に気を付け、脂肪分を摂りすぎない、スポーツを始める等、いろいろとやってみても、中高年になると太るのは仕方がありません。自然の成り行きで食事療法をいくら行っても、おなかを引っ込めるには、腹筋の筋力トレーニングしかないそうです。また70歳をすぎると体重は自然に低下していくのだそうです。 本当に肉食が身体に悪いかどうか、お考えいただく材料にはなったのではないでしょうか。できるだけ、自分の身体は自分で把握したいものです。健康、それは私たち生きるものにとって永遠のテーマです。過剰な健康ブームがもたらした「健康になれるなら死んでもいい」などというジョークは、既に心の健康を失ってしまっていることを感じて、どうも笑えません。心あっての身体、身体あっての心です。